ピックアップ駆動方式の改良


レーザーピックアップが移動する際の音が気になる


レーザーターンテーブルで音楽を聴いているとき、コツ、コツという音が聞こえるときがあります。

 

こういう音がしないレコードは偏心が無く問題の無いレコードで、レーザーピックアップはあまり動かなくて済みます。

しかし、レコードに偏心があるとゆらゆらとレーザーピックアップを動かしてレーザー光をレコードの溝に合わせるために動きます。

これがレーザーピックアップをギアで移動させているときの音です。

 

レーザーターンテーブル上面部

レーザーピックアップ部


 

 

レーザーピックアップはレコードの最内周(左側)に移動して溝を1本1本トレースしながら最外周(右側、写真参照)に移動してスタンバイ状態になります。溝の本数を数える事で、レコードの演奏時間が割り出せます。

レーザーターンテーブルの2つのディスプレイ
レーザーターンテーブルの2つのディスプレイ

 

CDは内周で、459rpm 〜 外周で198rpmの回転となり線速度が一定に保たれますが、レコードでは内周でも外周でも角速度が(回転数)一定で、内周ほど1回転の中に多くの情報が刻まれています。

 

33rpmのLPレコードでは、分間に33 1/3回転するので、内周から外周までの本数を33 1/3で除法すれば導かれます。このため演奏時間はCDのように表示することが出来ます。

 

先程、内周から外周までの溝を1本1本トレースして移動すると説明しましたが、同時に曲間も認識しますので、写真の左側のようにレコード盤面半分を横から見たイメージを表示します。 上からの一本線は盤面のこのあたりをトレースしているというレーザーピックアップの位置です。 上の写真では、2曲目、下の写真では、5曲目を少し過ぎたあたりを再生しています。

 

また、右側の数字は、ボタンSWで切替えて表示しますが、上は、1曲目からの経過時間(ELAPSED)、2曲目は、終了までの残り時間(REMAIN)です。

 

レーザーピックアップの駆動


さて、ここからが次の改良なのですが、レーザーピックアップの大きさは130 × 130 × 60mm 重さ約1.2KgもありCDプレーヤーのレーザーピックアップとは比べ物にならないほど大きくて重いのです。 これをレコードの外周 〜 内周までリニアに約120mm 滑らかに移動する必要があります。

 

最初はこんなに重い物を積んでいるのだから駆動するには大きな力が必要だとと思っていましたが、摩擦部に巧くボールベアリングが使われていて指先で軽く触れてもスムーズに動きます。

 

ステッピングモーターに付けられたギアと樹脂製のラック
ステッピングモーターに付けられたギアと樹脂製のラック

こんな事を思うのは私だけかも知れませんが、これほどスムーズに動くのならギアを使ってカクカク、ピックアップを駆動させる必要は無いのではないか・・・

昔使っていたB&O Beograd 4000のようにスペースが無くウォーム・ギアを使うならともかく、これだけスペースがあるのなら他の方法でピックアップを滑らかに、静かに移動させられるのではないか・・・

 

以前にレコード盤の上に落ちてきたのはこのギアだった事や、レコード盤の上に白く雪のような物が降って来たのは樹脂製の平ギアに塗布してあるシリコングリスだったこともわかり、益々なんとかしてみたいと思うようになりました。

 


いろいろと考えた結果昔のFMチューナーが選曲表示のために凧糸で、滑らかに針を動かす方法にヒントを得たワイヤードライブ駆動にしてみることにしました。

 

試作をするためモーターからギアを取ろうとした時にまた以前のようなギア落ちとなりました。良く見るとギアは先端に接着剤で付けられているようです。

 

ギアには穴があり写真のようなガイド用の突起もありますが、遊びがあるため接着でモーター軸の中心とギアの中心が完璧に合っているのか心配です

新しく作った真鍮製プーリーと旧ギア
新しく作った真鍮製プーリーと旧ギア

また、モーター軸の先に接着されたギアはバックラッシ(歯車同士の遊び)を避けるため樹脂製のラックにスプリングで常に強く押されてかみ合っているので、接着材の劣化により以前のようなギアの落下があったものと思われます。

 

オリジナルのギアによる駆動方式(裏面から)
オリジナルのギアによる駆動方式(裏面から)
改良したプーリーによるワイヤー駆動方式(裏面から)
改良したプーリーによるワイヤー駆動方式(裏面から)
接触部拡大写真(裏面から)
接触部拡大写真(裏面から)
接触部拡大写真(裏面から)
接触部拡大写真(裏面から)

ワイヤー駆動に変更してからすでに5年以上、毎日のように使用していますが不具合はありません。

ワイヤーは、ステンレス製49本のワイヤーを編んで構成された細い物ですが、最低断荷重は18Kgあるため今回の使用には余りある強度です。 また、気温による伸び縮みも心配しましたが、バリコンチューナーを参考にしたテンションを一定に保てるようにスプリンングを付けたため全く問題ありません。一応3年経ったらワイヤーを張り替えてみようと思います。

 

回転機器でメカによる動作音が小さくなって音が悪くなったという話は聞いた事がありませんが、この駆動方式の改良でも動作音は小さくなりました。

 

熱烈なレーザーターンテーブルマニアの方からリクエストをいただきこの改良を行いましたが、『音が非常に柔らかく静かになった』と嬉しい感想をいただきました。

 

ワイヤー駆動にはバックラッシが無いため、ギヤ駆動に比べるとサーボの補正量も異なるはずです。

また、レーザーピックアップで光の強弱を音信号に変換するにしても、余計な振動(遊び)は減らすべきでレコードの溝に対してリニアに追従するためにはギア駆動よりワイヤー駆動の方が静かで滑らかです。