使いこなし


レーザーターンテーブルを毎日のように使っているといろいろな経験をします。

使用時間が長くなれば時間と共に劣化する物も出てくるのは当然です。

 

実際にレーザーターンテーブルを使った上で体験した事を書き留めて行きたいと思います。

レーザーターンテーブルをお使いの方の参考になれば幸です。

 

ドライブベルトの寿命


ベルトドライブ駆動のターンテーブルは定期的にドライブベルトを交換する必要がありますが、レーザーターンテーブルも同様です。

ベルトの寿命が近づくと色々な不都合が出てきます。

ワウフラッターが目立っ来たり、回転をスタートさせるとすぐに定速にならないとか、音に力が無くってくるとか・・・

そして最後はベルトが切れて動作しなくなります。

 

レーザーターンテーブルに使われている新しいドライブベルトは、潰した状態で360mm、幅4mmの濃いめのキャメル色ですが、使用するに従って劣化し変色してきます。実際に目で見ても色の変化でおおよその使用年数がわかります。

 

左の写真は実際に使用したドライブベルトの平面写真です。

    ・約1年間使用した後のドライブベルト。

    ・約2年間使用した後のドライブベルト。

    ・約3年間使用した後のドライブベルト。

    ・約4年間使用した後のドライブベルト。

 

写真でははっきりと分かりませんが約4年間使用したドライブベルトはかなりの劣化があり、少し強く引っ張ると裂け目が出来て簡単に切れてしまいます。


約3年間使用したドライブベルトにも劣化が見られますので使用時間にもよりますが、3年経ったら交換された方が良いと思います。

 

オリジナルのベルトは、最近のベルトと比べ厚みがあります。

このタイプのベルトは現在では入手が難しいので、トーレンスのプレーヤーが使用している薄手で黒色のベルトに350mmで4mmのものがありましたのでこちらを使用しています。 

(オリジナルより10mm短いのですが問題ありません。)

 

ベルトの価格は¥3,000程度ですので私は毎年自分で交換しています。

 

通常のレコードプレーヤーのドライブベルト交換は簡単ですが、レーザーターンテーブルのベルト交換は非常に大変です。

レーザーピックアップが乗っているベースを外さないと上手く交換ができません。


また、オーディオメーカーの製品でお目にかかる事は無いと思いますが、ベースの高さ調整にワッシャーが幾つも入っています。

このワッシャーを入れ間違えるとレーザーピックアップとレコード盤面の高さが違ってくるため正常な再生が出来なくなることもあります。

 

このためメカ等が好きで腕に自信のある方ならともかく、普通はエルプで交換してもらいます。ただ、千葉社長が亡くなられてからアフター・サービスが変わったようで、エルプから直接購入したレーザーターンテーブル以外は、初期メンテナンス料金としてベルト交換だけでも¥162,000はかかるようです。

 

 

 

レコードクリーニング


レーザーターンテーブルの最も大きな弱点は、針のように溝を直接なぞらないため僅かなゴミや埃でもかき分けることが出来ないため全てノイズとなって出力してしまうことです。

このため、レーザーターンテーブルにはノイズ・ブランカーなどという入っているのですが・・・

 

レーザーターンテーブルはレコードのクリーニングが面倒だという方には向きません。

同じレコードでも一般的なプレーヤーで再生するのとレーザーターンテーブルで再生するのではノイズの量が違います。

少なくともレーザーターンテーブルを使用される方は、VPIやHannl、Clean Mate等のバキュームクリーナーは必須アイテムです。

 

購入したばかりの見た目には奇麗なレコードもバキュームクリーナーでクリーニングをしてから再生しないとかなりノイズが出ますが、レーザーターンテーブルが盤面の状態を正確にピックアップしている証拠です。

 

乾式のレコードクリーナーでは取れない細かな埃もバキュームクリーナーで取り除くことが出来ます。

湿らせたガーゼ等で拭き取ると表面は奇麗になりますが、溝の奥に入り込んだ目立たないゴミや汚れは取れません。

 

これはちょっと極端な例となりますが、レコードの内袋にピッタリとくっいてしまうような静電気がタップリのレコードを、乾燥して埃の多い所に放置します。

こんな酷いレコードでもバキュームクリーナーで1回クリーニングすると奇麗な状態に戻すことが出来ます。

静電気たっぷりで放置したレコードの盤面
静電気たっぷりで放置したレコードの盤面
バキュームクリーナーでクリーニング後の盤面
バキュームクリーナーでクリーニング後の盤面

針のプレーヤーであればこれでもう十分だと思いますが、レーザーターンテーブルでノイズがほぼ気にならない静かでクリーンな再生を目指すには、超音波レコード洗浄機の併用が最も効果的です。

ベルドリーム(US-60X)は超音波レコード洗浄機の中で最も安く、十分な効果がありますのでお勧めできます。

バキュームクリーナー VPI HW-16.5
バキュームクリーナー VPI HW-16.5
超音波レコード洗浄機 ベルドリーム US-60V
超音波レコード洗浄機 ベルドリーム US-60V

 

本体の他にレコード盤を回転させるためのモーターユニットやレーベル面が濡れないよう両側から押さえて保護するアクリルとゴムのパッキンや溝のゴミを取るためのブラシなど合計で20万円を超えてしまいます。

それでもバキュームクリーナーとは異なる効果があります。

 

レコードを洗浄するタンクに精製水を入れますが、適量にするには 500ccのボトルが4.5本必要ですが、これに極く僅かな静電防止液を入れても良いと思います。

水温もヒーターが内蔵されており設定が出来ますが冬でも25℃位あれば十分だと思います。

実際の洗浄時間は盤面の汚れによりタイマーで変更できますが、私は5分に設定してあります。

本体のSWを入れると高い振動音が聞こえ、更にモーターユニットのSWを入れるとゆっくりレコード盤が回転を始めます。

5分経つと本体のSWが切れますが、レコード盤は回転し続けるのでSWを切ります。

洗浄剤は全く使用していないのですが、レコードが浸っていたタンク内を見ると細かなゴミなどを見つけることができます。

 

お勧めは、超音波レコード洗浄機で洗浄した後、バキュームクリーナーで仕上げを行うことです。

仕上げと言ってもバキュームクリーナーで1回洗浄し吸引を十分行うだけです。

 

手間はかかりますが、このようにクリーニングを行ったレコードをレーザーターンテーブルで再生するとノイズは針のプレーヤー並に減りS/Nが驚異的にアップします。

 

 

トレイ レールの塗装剥げ


レーザーターンテーブルを半年位使うと必ず黒で塗られたトレイ レールの塗装が摩擦により剥げて来ます。

トレイ開閉の度に目に付くので私は気になりました。 最初は剥げた部分を補うように黒のマジックインキなどを塗ってごまかしていましたが、暫く使用すると同様に 剥げてしまいます。

 

改良を希望された方のトレイレール
改良を希望された方のトレイレール
小細工をした私のトレイレール
小細工をした私のトレイレール

 

折角良い音でレコードを聴こうとしてセットすると徐々に剥げてくるレールが嫌でも目に付きます。 マジックインキではなくトレイを分解して焼き付け塗装をすることも考えましたが、頻繁に開閉を繰り返せば塗装が剥げてくるのは火を見るより明らかです。

 

そんな時浮かんだアイディアが,擦れて剥げてしまうところに塗装することが間違いで塗装するのでは無く、いっそ塗装を剥がしてしまってはどうかと言うことでした。

 

実際の作業は極めて簡単です。 綿棒の先にピカール(金属磨き)を少量付けて、レールに沿って軽く擦ると黒の塗装が取れ、写真のような金属の地が出て来ます。暫く磨くとクローム・メッキされたような光沢が出て来ます。

 

このクロームのような色合いが嫌だという方もいらっしゃると思いますが、私はシルバーの筐体にも合いますし塗装が剥げた状態よりずっと好きです。


 

強く擦ったりトレイを押し下げるとメカに大きな負担がかかりますので、力を入れず軽く何度も擦るのがコツです。

仕上げは、綺麗な綿棒でピカールを音した後に、錆止めと潤滑用に少量のCRC5-56を綿棒に付けてレールに塗布します。

呉々も付けすぎたり、プラスチック部分にかからないよう注意してください。

私と同様にトレイ レールの塗装の剥げが気になる方は自己責任でお試しください。

 

ターンテーブル・シートの摩耗


レーザーターンテーブルにも経年変化が出てきます。 

その中の一つにターンテーブルシートの摩耗(劣化)があります。 一般のプレーヤーでは、ターンテーブルシートが摩耗したからと言って音質に変化が出ても、レコードが再生できないと言うことはあり得ません。

ところがレーザーターンテーブルではあるのです。

 

レーザーターンテーブルのターンテーブルシートはやや堅めの『発泡スポンジ』と言うような押すと凹む素材で出来ています。

 

使用時間にもよりますが、3年〜5年使用すると縁は丸くなり、汚れも目立ち全体的に薄くなって来ます。

つまり、ターンテーブルシートが摩耗してしまったのです。 ターンテーブルシートがこのような状態が酷くなってくると、今まで再生できていたレコードが再生できなくなる事があります。


 

シートの摩耗状態や再生するレコードの厚さなどにもよりますが、軽傷の場合はレコードをターンテーブルにセットして再生状態にすると、ピックアップがレコードの内周から溝数を読んでいき、最外周まで行き再生のスタンバイをします。

この後、再生をするかしないかでディスプレイに写真のように『Hbnd』と表示され強制的にスタンバイ状態に戻ってしまいます。 『Hbnd』はエラーメッセージの一つで、『レーザーピックアップとレコード盤の距離が離れピックアップの高さ調整範囲を超えています。』と言うことです。

このような場合、ターンテーブルシートが摩耗した分を補ってあげれば再生できるようになります。 本当はターンテーブルシートの下に摩耗した分位の厚さのものを入れて調整できれば見た目も良いのですが、シートの変更の所でも触れたようにプラッターとシートが一体になっていてシートのみの交換は出来ず、ELPから一式を購入すると15,000円位すると思います。


 

簡単に高さを調整するには、フェルト製のターンテーブルシートなどを上に敷くことが思い浮かびますが、厚みがかなりあることや音質的にもあまりお勧め出来ません。

それならば、ケント紙(0.3〜0.5mm ) をシートからはみ出ないように丸く切って使用した方が音質的には良いと思います。

 

回転数表示と実際の回転数


LPレコードの回転数は3分間に100回転、つまり1分間で33,3回転となって初めてマスター盤と同じピッチで再生されるのですが、実際には再生機器により正確なピッチにならないことがあります。

 

ダイレクトドライブ方式では問題無く正確な回転数を得られましたが、アイドラー方式やベルトドライブ方式ではダイレクトドライブ方式ほど簡単に正確なピッチを保つ事は意外に難しいと思います。

レーザーターンテーブルは、初期の設定で33.33という回転数が表示されます。この数字を見てしまうと、絶対的に33.33回転で再生されてしまうと思いがちですが、実際はそう正しい訳ではありません。

デジタル表示で回転数を表示をしていますが、実際の回転伝達はアナログのベルトドライブ方式だからです。

一般のレコードプレーヤーであればストロボを使って実際の回転数を見ながら調整も可能ですが、レーザーターンテーブルはトレー方式で、レコード盤を上面から見ることが出来ないためストロボを使うことが出来ません。


友人で、YAMAHA GT-2000の駆動、制御回路の設計をされたK&KさんがCDとレーザーターンテーブルの試聴をされたとき、『レーザーターンテーブルの回転が少し速くないですか?』と言われたのですが、私にはわかりませんでした。でも実際にCDと同時に比較して聴くと確かに早いのです。

レコード、CDともに同じソースを選び、同時にスタートさせてみるとレーザーターンテーブルの方が24分程度のソースで、約10秒程度早く終了します。

レーザーターンテーブルの回転数を調整したところ、33.1回転にしたところCDとピッタリ合いました。 このズレの原因はベルトの厚さにも関係があるようです。

当然モータープーリーとプラッターの直径から正しいモーターの回転数を割り出していると思いますが、使用するベルトの厚みによって回転数は変化してしまうのです。


 

そういえば、私のレーザーターンテーブルはベルトが伸びたため市販のベルトを代用しています。

交換の際にはオリジナルベルトの厚さなどは気にしていませんでした。 まあ、現在使用中のベルトでは回転数を33.1に合わせれば正しい回転になることがわかりましたので良いことにいたします。 ただ、レーザーターンテーブルを最近購入され、ベルト交換もしていない複数の方から33.33の表示は出ているが回転数がCDに比べて早い(ピッチが高い)というお話しを伺っています。

これに関しては製造元に聞いてみるしかありません。

 

《追伸》

プロのヴァイオリニストの方から、ご自身の録音されたレコードを聴いても標準表示の33.33ではピッチが高く、33.1でピッタリ合うとのご連絡を頂きました。