レーザーターンテーブル内部の回路変更、防振対策、デザインまで個人で行った高音質モデル (特許庁 意匠登録済)
レーザーターンテーブル内部の回路変更、防振対策、デザインまで個人で行った高音質モデル (特許庁 意匠登録済)

はじめに


世界で唯一の非接触アナログレコード・プレーヤーであるレーザーターンテーブルが大好きです。

自分自身が満足出来るようにコツコツと改良を重ねた結果、筐体のデザインからアナログ回路まで一新しました。

 

私が行っている改良は自分で購入した LTを、自分自身が納得できるよう、より良い音で、より良いデザインで音楽を聴きたいという思いのみで行っており販売などは行っておりません。改良を行いますと 当然の事ながら製造元であるELPの修理や保証は受けらなくなってしまいます。

 

最近、これらをご理解頂いた上で、拙宅で実際の音を試聴され気に入って頂いた方や、どうしても改良して欲しいという方にのみに改良を行っています。

 

株式会社 ELP は、世界で唯一 レーザーターンテーブルを製造しているメーカーで、レーザーターンテーブル一筋に20余年間製造・販売を行って来た会社です。私の行っている改良は、あくまで私自身が満足するために行っており、ELP を中傷するようなつもりは全くありません。1年間私の筐体デザインを千葉社長に無償でお貸ししていた事もありました。

 

レーザーターンテーブルとの出会い


     KENWOOD KP-1100
     KENWOOD KP-1100

 

 

レーザーターンテーブルとの出会いは確か1985年だったと思います。

 

当時私は某オーディオメーカーの商品企画部というところで、 KP-1100、KP-990というプレーヤーの企画に携わっていました。

 

製品化に向けて最後の仕上げの頃、試聴室でプレーヤー設計の人達と音質の確認をしていたとき、設計者の一人が『スゴイプレーヤーを短時間だけど聴けるよ!』と言って LTを試聴室に持ち込んで来て、『これ300万円なんだって』と言いながらとても慎重にセッティングしていた事を覚えています。  

Finial Technology製 試作レーザーターンテーブル      
Finial Technology製 試作レーザーターンテーブル      

レーザーターンテーブルを開発・試作したのはアメリカのフィニャール(Finial Technology)社で販売に向けたパートナーを求めて日本のオーディオメーカーに試作機を持ち回っていたようです。  

 

早速聴いたレーザーターンテーブルの音は一種独特で、一言で言えば奇麗な音、低音の量感は無く中域から高域にかけやや硬質で透明感のある音でした。  

 

僅か15分程度の短い時間でレコードの片面しか聴くことが出来ませんでしたが、音質以外にもCDのような頭出しや、300万円という価格、キャノン出力、別電源、いかにも試作機というデザイン筐体などが印象に残りました。

 

実際にレーザーターンテーブルを開発・試作したのはアメリカの『フィニャール』(Finial Technology)社で販売に向けたパートナーを求めて日本のオーディオメーカー各社に試作機を持ち回っていたようです。  

 

 

僅かな時間の試聴で1枚のレコードしか聴くことが出来ませんでしたが、音質以外にもCDのような頭出しや、300万円という価格、LINE出力、別電源、いかにも試作機という印象が残りました。

 

写真は貴重なFINIALの文字が入った1985年当時のフィニャール製試作レーザーターンテーブルです。

この頃の試作モデルは本体とは別に立派で大型の別筐体電源ユニット(オールアルミ製)が付属してレーザーターンテーブル本体に直流電源のみを供給していました。このモデルは50台ほど作られ試作機ですが販売もされたようです。

 

レーザーターンテーブルを購入


フィニャールのレーザーターンテーブルと初めて出会ってから20余年も経った 2008年、ホームページを見ていて思いがけず ELPのレーザー・ターンテーブルを見つけました。

 

20余年前と変わらない外観でしたが、別筐体だった電源部は内蔵され価格は 300万円の 1 / 3 の100万円に下がり VPI のバキュームクリーナーが付属すると書かれていました。


ELP LT-1XRC

VPI HW-16.5 


 

 20年前に聴いた奇麗な音の記憶が急に蘇り、自分なりに使いこなしてみたいという気持ちと、今使っている針交換の費用が半分になるとか、長期の分割払いなら何とか等々・・・

購入に都合の良い事ばかりを並べて考えていました。

 

1ヶ月も経った頃、ELPに電話して購入の手続きをしました。高額なものなので、事前に試聴でもと思いましたが、試作機を聴いていた事や20余年前より悪くなっている事は無いと思いそのまま購入しました。

手続きの際、ELPから『1台、1台手作りなので納品まで3ヶ月かかります。』また、『出力を選んでください。CDのような LINE出力モデルか、一般的なプレーヤーのようなPHONO出力モデルのどちらかを選んでください。』と言われたので、待つのは仕方ないとして、アンプのPHONO入力は以前から使っているプレーヤーで一杯だったので、 LINE出力モデルを選びました。

 

納品までの間、『試聴室で音を聴く事ができます。』と言われていたのですが、上手く都合が合わずに納品日を迎えてしまいました。

 

ようやく納品の日を迎え、ほぼ正方形の大きな段ボール箱に入った LTが届き、早速セッティングをして聴いた音は、以前聴いたイメージのようにノイズに敏感ですが、奇麗な音で素直な印象でした。

 

実際に聞き慣れた自分の装置に繋いで聴くといろいろわかります。

中域 〜 高域は奇麗な音ですが、中低域 〜 低域はエネルギー感が少なく薄い印象です。早めにローカットをしているようで、編成の大きなオーケストラなど土台が弱いため頼りなく、コンサートホールの暗騒音は殆んど感じられず物足りません。

またエージングによってかなり音が変わります。1時間位再生していると透明感としなやかさが出てきます。

今までの経験からオーディオ機器が本来の音を出すまでには1ヶ月位はかかるので、焦らず使うことにしました。

 

ただ、他のオーディオ機器と並べるとチープなデザインや質感(樹脂)のためどうしても違和感がありました。

何と言っても20余年前の試作機と同じデザインでしたから・・・

 

 

レーザーターンテーブルの故障


そんな事を感じながらも1週間程1日10枚位のレコードは聴いていたと思います。

すると突然、レコードを載せるトレーの開け閉めが極端に遅くなりました。

そして遂に手を使って押し込めないとトレーが閉まらなくなってしまいました。

 

1年間の無償保証が付いているので、早速連絡をしてELPに送りました。

2週間くらい経ってELPから『修理が完了しました。』という連絡がありました。何処が悪かったのですか?と聞くと、『開閉の機構の部分に悪いところがあったようです。』と言うような事を言われたと思います。

 

トレーの開閉が直りまた2週間位して、カートリッジでの再生では考えられませんが、今後は左右のチャンネルが輪唱のように片方のチャンネルが1回転遅れて溝をトレースするようになってしまいました。

取扱説明書にあったキャリブレーションレコードを再生すれば直るかと思い何度か再生しましたが、何度やっても直らず、とても音楽を聴ける状態ではないので、再度ELPに連絡して修理をしてもらう事にしました。

 

発送から2週間位してELPから修理完了の連絡がありました。『片方の音声信号を読み取るピックアップがズレてしまったようです。正常に戻しました。』というような連絡内容で取りあえず安心してまた、再生を楽しみました。

 

ところが、2度ある事は3度ある?

今度は再生中に『ガクッ』という音がして再生が止まってしまいました。どうしたんだろうとトレーを開けたところ、写真のようギアがレコード盤の上に乗っているではありませんか。

 

百聞は一見に如かずと思い撮影したのがこの写真です。

 

 


 

後で、わかりましたがこのギアは、ピッアップを水平移動させるためのモーターに付いていたギアでした。

流石に3ヶ月も経たないうちに3回故障し、その内の1ヶ月は修理のため使用していなかった事になるので、新品交換のお願いをしたいと思いレーザーターンテーブルを直接自分で持ち込む事にしました。

持ち込んだ当日は、営業の担当者が出張で故千葉社長に直接相談する事になりました。

レーザー・ターンテーブルの製造・販売を20余年もやって来た人、また『GEのジャック・ウエルチを怒鳴りつけた男』という情報はホームページで知っていたので、どんな人だろうと興味津々で伺いました。

 

初めてお会いした千葉社長は、腰が低く、ニコニコされていて、とても人を『怒鳴りつける』ような方には見えませんでした。

ELPにギアの取れたレーザー・ターンテーブルを置いて一息ついた所で、千葉社長がコーヒーでも飲みましょうと近くのファミリー・レストランに連れて行ってくれました。

 

一通りの世間話が終わった頃に、私から LTの交換についてお願いしたところ、嫌な顔一つされず『わかりました。1台1台手作りに近い商品なので、稀にそのような事も起こります。別のものと交換しましょう。』と仰ってくださいました。

 

ほっとした私は、一挙にオーディやレコードについて話し始めましたが、千葉社長から『私はオーディオやレコードはよくわからないんですよ。レコードも美空ひばりのものを何枚か持っているだけで・・・』と言われて驚きました。

 

私の勝手な思い込みでしたが、音楽やオーディオが大好きで、オリジナルの名盤コレクションをされているような方だと思っておりました。

 

その後、世間話に戻り交換のお礼を言って別れました。

 

ELPのバージョンアップ


交換してもらったレーザーターンテーブルは約3ヶ月後に届きました。

早速開梱し、セッティングをして試聴をはじめました。

ELPでどの位エージングをしてくれたかはわかりませんが、交換前のレーザーターンテーブルよりこなれていて低音も若干伸びていました。

 

1台1台の手作りのため個体差が出てしまうのは当然だと思います。

ピアノを購入するときのように、聴き比べをして一番自分に合うものを選べれば良いのですが、それには再生するシステムなども絡んでくるので難しいですね。

 

交換してもらった後は安定していましたが、聴き込むにつれて不満も出てきました。

中域 ~ 高域の美しさは魅力なのですが、低域が伸びず重低音が出ません。

それに全体的なS/N感も今ひとつでした。

 

その頃にレーザー・ターンテーブルとの比較用で使用していたプレーヤーは、THORENS Ambianceという美しいプレーヤーで、 アームにはAudio Claft のAC3300LBというストレートアーム、好く使用するカートリッジは、ortfon Cadenza Blue、Cadenza Red、MC-30W、SPU、DENON DL-103R、SHURE V-15 Ⅲ などで、フォノイコライザーには、Audio Craft PE500、McIntosh C-2200というプリアンプに内蔵されたものを使っていました。 

 

アームの調整からプレーヤーベースまでかなり追い込んだ良い状態のプレーヤーだったと思います。

THORENS Ambiance

McIntosh C-2200




ortofon Cadenza Blue

ortofon Cadenza Red

ortofon MC-30W

ortofon SPU Classic G

DENON DL-103R

SHURE V-15 Ⅲ


 

もちろん、 KP-1100を改良したモデルも使用していましたが、オーディオスペースの関係もありプレーヤーの主役はTHORENSが占めていました。

 

このプレーヤーと比較するとやはりもの足りません。

また、S/N感もそうですが、音楽の躍動感が感じられませんでした。

 

しばらくしてELPから『新オーディオ基盤へグレードアップのお知らせ』という案内が届きました。

『新たなオーディオ基盤により、解像度が高くなりより良い音で音楽を楽しめます。』というような内容の案内で、バージョンアップの価格は10万円だったと思います。

 

新たな基盤になったレーザー・ターンテーブルの音を聴いてからでも遅く無かったのですが、もっと良い音にしたいという気持ちばかりが先行していました。

 

グレードアップを申し込んで約2週間、待ちに待った新オーディオ基板を積んだレーザーターンテーブルが届き早速聴きました。

 

はじめに聴いたのは聞き慣れたリンダ・ロンシュタットとネルソン・リドルのベストセラーアルバム フォー・センチメンタル・リーズンズから『いつか王子様が』でしたが、聴いてすぐにグレードアップ前の音と違う事がわかりました。

これがグレードアップした音!・・・

 

感動出来れば良かったのですが、私の耳には解像度や周波数帯域の両サイドは変わらず、中高域のみを強調した音にしか聴こえませんでした。

いろいろなレコードを次々に聴いてみましたが印象は変わりません。

 

なぜ? 何故? ナゼ? 何でこんな音になったの? と疑問ばかりが頭の中を駆け巡りました。

 

解像度が高くなった訳ではなく、画像で言うと単にシャープをかけエッジが強調されたようなもので、根本的な解像度は上がってなく、S/N感や躍動感どころの話ではなくなりました。 

 

高校生の頃から読んでいたFM fan誌ダイナミックテストの故長岡鉄男先生の影響か、私はオーディオ製品を買うと必ず天板を開け中身を調べるクセがあり、写真を撮り続けていました。

 

レーザーターンテーブルも購入して直ぐに天板を開けてデジカメで記念写真を撮りました。

どこを変えたらこんな音になったのか知りたくなりグレードアップ後の天板を開けました。

 

デジカメで撮ったパソコン画面と、大きな一枚のオーディオ基盤(435 × 145mmのプリント基板)を見比べながら変更箇所を探しましたが見つかりません。結局写真で撮った表面の画像とグレードアップ後のオーディオ基板は全く同じでした。 私にとってこの音の違いは、勘違いという程度のものではありません。

 

後戻りできず、オーディオ基盤を外して裏側を確認して見ることにしました。

 

注意しながら7つあるコネクターを全て外し、基盤を固定している6本のネジを外してゆっくり持ち上げると、発見しました!!

 AUDIO EQとプリントされた58 × 60mm の明らかに後から追加された基盤です。(写真参照)

 

本体の大型基板に半田付けされたコードが7本、基板に繋がっていました。

オーディオ基盤から電源を供給され、信号をIN・OUTしていますので、コネクターを外すと信号が途切れ出力されなくなる為、IN・OUTを直結して音を聴いてみました。

 

両帯域は伸びきっていませんが、以前と同じ素直な音に戻りました。

 

ELPではどうしてこの基板を繋ぐと解像度が高くなると言っているのかわかりませんが、間違いなく中域は持ち上がります。

 

新オーディオ基盤のバージョンアップとはこの事だったようです。 

 

耳だけで無く実際の特性の変化を知りたかったので、周波数特性テストレコードを再生して特性を較べてみました。

左が、ELPでグレードアップされた特性で、右が新オーディオ基板を外したオリジナルの特製です。

 

新オーディオ基板装着時の周波数特性
新オーディオ基板装着時の周波数特性
新オーディオ基板を外した時の周波数特性
新オーディオ基板を外した時の周波数特性

 

 

KP-1100しかり、私の理想のプレーヤー、それは・・・

『レコードに刻まれた音をすべて拾い上げ、何の色付けも無くすべて出力させること』これが理想のプレーヤーで、

レコード盤に刻まれている音に色づけしたり、音をごまかしたりすることはプレーヤーにあるまじき事です。

 

ましてやプレーヤー自体で音に細工をして出力させることなど考えられません。

当然この基板はスルーしてバージョンアップ前の音に戻しました。 

これらの事がきっかけで、プレーヤーに対する考え方や音の嗜好がELPと私とでは全く異なる事がわかり、自分自身が満足、そして納得できるよう独自の改良をしていく事にしました。

当然、オリジナルに手を加えますので修理等はしてもらえなくなります。

 

それでもいろいろと改良したいという気持ちは変わりませんでした。

 

 

横溝 癒やしの味方


横溝とWeb辞書で調べると横溝正史と出てしまいます。 私のお伝えしたい横溝は、《おうこう》とは読まずヨコミゾと読んで頂きたいと思います。 レコード盤でいう横溝は、現在再生している一本前の溝か、一本先の溝ですが、レコード盤によっては僅かに隣の溝の音が漏れてくることがあります。クロス・トークと呼ばれ日本語では漏話などと言われます。

 

そんな訳でレーザーターンテーブルのページなのですが、関連のあるような話しとしてお読み頂ければ幸いです。

 

 

早速横溝(横道)に逸れますがレーザーターンテーブルの改良や改良した音の確認をするときに、12月24日生まれのイヴ(ネコ)が一緒に音を聴いてくれます。

 

スピーカーのセンター位置には私がいるためかいつも決まって、KP-1100 の上で聴いています。

 

よく犬の耳は良いと言われますが、高域はネコの方が良く、何と60KHz位までは聴こえるようで、少しでも歪んだような音がすると両耳をぴくぴくとさせて反応します。私とは音の趣味が合うようで、つまらない音がしていると部屋から出て行ってしまいます。

 

音に疑問があり悩んでいる時にはイヴが居てくれるだけで癒やされます。

ネコには手よりも耳を借りるべきですね。

 

クラシックも好きですが、一番のお気に入りは女性ヴォーカルで最近のお気に入りはダイアナ・パントンです。

聴いていて気持ちが良いようでそのまま眠ってしまうこともあります。

ネコの同性にも好かれるダイアナ・パントン。

良い音で再生出来ているダイアナ・パントンは私も大好きです。